構造デザイン?
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ここでは、本サイトのテーマ:構造デザインについてご説明します。



構造デザインとは?
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Archstructure.net


建築、土木の構造設計の世界において構造デザインという言葉が使われだしたのは、ここ30年位ではないかと思います。
初めて雑誌などに登場したのは40年ほど前のようですが、市民権を 得たのはやはり上記でしょう。

「構造」と「デザイン」という、一見相反する意味の言葉を組み合わせた「構造デザイン」。
一体どういう意味でしょうか。


この言葉の定義として、次のような点を挙げることができます。

1.構造設計における、問題解決方法が卓抜している(優れている)

構造設計は、他のビジネス同様、ある仕事の中で、与えられた条件を満足するような最適解(ソリューション)を見つける作業です。

単純な例を挙げるなら。。。


  ・スパン○m、床荷重○t/m2を支えられるRC梁を、成○○cm以内で設計する。    

というカンジです。

しかしこの例は極めて簡単で、末端的な例です。
実際の設計の現場では非常に高級、複雑で、難しい条件が提示されます。

例えば。。。


「やあヨルグ、今回もよろしく頼むよ!今回はなかなかタイヘンだぞ。
既存のサッカースタジアムがあるんだけど、そこに新たに屋根を掛けて欲しいんだ。
ざっと4万平米ってとこかな。
けど既存スタジアムは弱いから、その上に柱は立てられないんだ。
それと、スタジアムの外に柱を立ててもいいけど杭はダメだ。地下水を汚しちゃうからね。
あと、工事はスタンドに足場を立てないで、あっという間にやって欲しいんだ。
サッカーのオフシ−ズンの間にね。
スケジュールとしては一年半後に世界陸上の大会があるからそれまでに設計、工事だ。
ゼッタイに遅れてはだめだよ。じゃ、よろしくな!」

(ヨルグシュライヒ構造設計のドイツ、ダイムラースタジアムの場合)


これらに対し、その条件が困難であるにも関わらず、トンでもなくすばらしい解決方法を編み出す人がいます。

このような構造設計(計画)を賞賛の意味を込めて構造デザインと呼ぶ場合があります。

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不可能としか思えない難題に、
ヨルグシュライヒはリング構造の膜屋根で
全ての条件をクリアした(ダイムラーST.)

-限りなく透明な壁面を- 建築家の要望に対し、
ピーターライスは新たなガラス支持工法:
DPG工法を開発した


2.構造体の設計において、デザイン的配慮がなされている

もうひとつは、構造体そのものが文字通りデザインされる場合です。

構造設計の最大の目標は、力学的に合理性があり、経済的であることです。
しかし、ただ合理的であるだけでは、美的観点から望ましいとは限りません。

例えば歩道橋や、商業施設のアトリウムのガラス支持架構など、 直接、一般利用者の目に触れるものについてはなんらかのデザイン的処理がなされる必要があります。

それも塗装や装飾ではなく、構造計画レベルより、それに対する検討が必要です。

代々木体育館の構造設計で知られる坪井善勝氏は次のような言葉を遺しています。
「真の美は、構造的合理性の近傍にある」

このような、構造的要求と、デザイン性を両立させた構造の設計(計画)を構造デザインと呼びます。

※構造的に合理的なものと、美的に満足なものとにはズレがある。
構造合理性のみを追求しても建築美を満足できるとは限らない、の意



代々木体育館:丹下健三、坪井義勝

-屋根のカーブをもっとシャープに!-
丹下氏の要望に対し、坪井氏は
「セミリジット吊屋根」のコンセプトを開発した

カラトラヴァの橋は、
もはや橋というより
渡ることのできる彫刻だ

なお、これらの定義において、「耐震性」「安全性」などは、自明である=当然クリアしていることとして、定義の条件から省かれています。

上記で定義した2つには次のような関係、位置づけを見ることができます。

すなわち、は純粋に構造の領域の問題であることが多いのに対し、
は主に建築(デザイン)と構造の領域の中間(両者の要求を満たすもの)で起こります。



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の例:

・シェル構造とすることで厚さを極端に薄くできた

・○○という新しい構造形式(材料)を開発した

の例:

・ガラスの支持梁を、視界を妨げないよう細いケーブルによる構造とした

・ドームの形態を、力学的合理性による形態と、美的な形態の中間とした
 (札幌ドーム、大館樹海ドーム)


なお、これらは起きている領域が異なるだけであって、の方が よりも優れている、
いうことではありません。




また、上の2つを包括するような、次のような捉え方、切り口もあります

3.構造の設計において個性、作家性がある

一般の方などの中には構造設計の中の一業務:構造計算を捕えて、 「構造設計は計算なんだから誰がやっても同じ結果になるんじゃないの?」と考える方もいます。
当然これは間違いで、そうはなりません。

構造設計、特にその基本設計、コンセプトデザインなどと呼ばれる初期のステージにおいては、そのプロジェクトに対する素案、方向性はその設計者の資質に大きく左右されます。
この段階において設計者はあらゆる角度:安全性、工法、コストなどから客観的にその案の妥当性を検討します。

しかし特にベテランの設計者などはそれまでの経験、バックグラウンドから自分の「型」とも呼べる手法や 得意な方法、又は自身の強い信念を持ち、 これらを基に案、方向性を採用することがあります。
これによりその採用案には恣意性、作家性、平たく言えば「個性」が生じます。

つまりエンジニアリングという科学的、論理的な作業の中に個人の個性の反映が起こります。

これはデザインであるといえます。

なぜならデザインとは、たとえば例として、ある建築家が建物の外壁を「デザイン」する場合、 それはその建築家の「内なる」経験から最良のものを選ぶのであり、主観的なものだからです。 (例外、異論もあるでしょうが例え話のため話を単純化しています)

まとめると、本来、客観的:個性の入るはずのない設計作業に個人の個性、主観が反映されます。

このようにして設計された構造物が、その「個性」により魅力を持っているならばその設計は「構造デザイン」と呼ぶことができます。
またこのような設計を数多く行える設計者は「構造デザイナー」だと言えるでしょう。




なおこれにより、その設計者:構造デザイナーによる複数の作品にはある種のカラー、統一性が生じます。 その統一性こそが彼の「作家性」といえます
ただしその統一性は目で見ることが出来る場合も、そうでない場合もあります。

目で見えるとは作品の外観に現れている、構造形態の統一性などの場合(例:カラトラバ)で、 目で見えないとはその統一性が設計コンセプトなどの抽象的なものの場合(例:セシルバルモンド)です。
また彼らはそのカラーにより仕事を依頼されることも起こります。



東京フォーラムのガラス棟で、
SDG渡辺邦夫氏はあえて
主構造を長手方向にスパンさせた




長々と書いて来ましたが、「構造デザイン」とは?を一言で言うとすると、下記に集約される気がします。

   ・「力の流れをデザインする」こと

  ・要求される条件の為に行う構造設計上の「工夫」

いかがでしょうか。




なお「構造デザイン」という言葉は日本語独特のもので、英語でそれに該当するものはありません。
英語で「Structural Design」といった場合、これは「構造設計」であり(design=設計だから)、 日本語で言うところの「構造デザイン」という意味合いは、ないこともないですが、希薄です。
敢えて探すなら"Art of Structural Engineering" (構造技術のアート)でしょうか。

また「構造デザイナー」についてもある種「和製英語」で、英語でこれに該当するものを探すと「Architect-Engineer(建築家的技師)」となるでしょう。
カラトラバ、ピーターライス、マークミムラムなどはよくこのように表現されます。


また蛇足ですが、近年「構造デザイン」という言葉がかなり安易に使われている例が見受けられます。
単なる構造設計の教科書や授業に「構造デザイン入門」と付けられたもの、雑誌の構造特集のキャッチフレーズは必ず「○○の構造デザイン」。。
深い意味も考えず、流行語扱いすると消えていくのも早くなりそうな気もします。




構造デザインという言葉は、歴史が浅いこともあり、定義は明確でなく、解釈は十人十色です。

ここで述べた定義はあくまで管理人の個人的見解であり、絶対的定義ではありません。

また構造デザインに深く興味がある方は、以上のようなことからぜひご自身でその定義を考えてみることをお勧めします





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