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'10/11/21

トリノ、赤いアーチの歩道橋        <<前ページに戻る

前回の記事と同様、フランスのヒューダトン設計のイタリア、トリノの歩道橋。 シンボリックな赤いアーチが歩道を吊る形となっています。 (拡大写真は全て上記リンク先で)


本橋は2006に開かれた、トリノオリンピックを機に作られたもの。
オリンピックの選手村と競技会場を隔てて線路が渡っており、これを結ぶことを目的とし、また同地区のシンボルとなることが期待されました。

歩道を吊る主構造である、シンボリックな赤いアーチは歩道軸方向と直交方向に設けられており、そのアーチからケーブルにより歩道面が吊られています。
本サイトで取り上げたMiho Museumの連絡橋と同様の構成です。

この吊りケーブルは歩道を吊る吊り材であると同時に、アーチの座屈を補強する補剛材となっており、その仕組みは自転車の車輪=リムとスポークの仕組みと同じです。

歩道からアーチに向かって歩く方向=橋軸方向からアーチを見た場合、吊りケーブルはアーチの中心方向に向かっており、ちょうど自転車のスポークと同様の配置となります。

自転車の車輪は、車輪を時計として考えたとき、12時(=真上)方向付近のスポークがハブ(車輪中心軸)にかかる重量を引張力で支持する一方、3時、9時(=真横)方向付近のスポークは、リムが横に広がろうとするのを防いでおり、これにより車輪の円形を保っています。

これにより、リムには圧縮力のみが作用し、曲げモーメントの発生を抑えます

本橋の場合も、上記と同様の仕組みで吊りケーブルがアーチの座屈を補強しています。

余談ですが、自転車の車輪は上記の仕組となった上で、車輪が進む(=回転する)ごとにスポークの役割が刻々と変わる、非常によく出来た!構造となっています。

6時の位置に来たときは圧縮で緩むため、12時からスタートすると引張材→補剛材→圧縮で緩む→補剛材→引張材と役割を変えていきます。
そして最終的に設地してる6時の位置のリムで、重量を地面へ伝えます。

普段自転車に乗るときは全く気にも留めないですが。。
興味のある方はwikipedia 他でもう少し調べてみるのもいいかも。
コチラのサイトが色々網羅していそうです。

上写真および下の図で、歩道面に上に凸向きのゆるいアーチ状にケーブルが張られていますがこれはなんでしょう。。?   詳細は不明ですが、推測するに恐らくは、路面がカーブしているので、ねじれ(倒れ)防止の為にケーブルで引っ張っているのでしょう。

しかしケーブルを張るとその分、床面に下向きの力が作用します。よってアーチにかかる力も増える事となり、アーチを更に強くする必要があります。かといってケーブルをやめるわけにもいかないし。。とダトン氏は悩んだことでしょう。

それなら歩道床下に補強トラスを設けてねじり剛性を上げる方法もあります。
しかしそれだと線路の桁下有効空間を確保できなくなる恐れがあります。
じゃあトラス分だけ歩道を高くする。。?
それだと今度はスロープの勾配はダイジョウブ。。?
。。。結局、床上で補強するしかないか。。と現在の案となったのでは。。?





アーチを橋軸と直交方向に掛けたものは近年の新しい構造形式ですが、最近はそこそこ見るようになってきました。

純粋な構造力学上、経済性上は、一本の支柱から吊る斜張橋形式のほうが簡単で安上がりですが、シンボル性があり、地域のランドマークとすることが出来ます。

道路橋ではまだあまりないようですが、エントランスゲートをくぐるようなドラマティックな演出とすることができます。

関連サイト:ヒューダトン氏のウェブサイト

コチラに本橋の詳細なレポートがあります

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