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重いRCが用いられるワケ

例え話でわかりやすく説明します

現代において、建物の材料として最もよく用いられるのは鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造の3つです。

このうち、木造は主に戸建て住宅などで用いられ、いわゆるビルとして用いられるのは前者2つ:鉄筋コンクリートと鉄骨造です。
なお、それらはそれぞれRC造,S造と略されます。

それらの使い分けとして、例えば集合住宅、いわゆるマンションは通常RCで、オフィスビルはS造、などとなります。


このRC造とS造を比べると、建物自身の重さとしてはRCの方が圧倒的に重くなります。
建物が重いと地震の時に建物にかかる力もその分大きくなり、不利です。

ではなぜそのような不利な点があるにも関わらず、マンションは重いRC造にするのでしょうか。

その理由をビールピッチャーに例えて説明します

ビールピッチャーにはガラス製のもの(上左図の左)とプラスチック製(同、右)のものがあります。
突然ですが、もしアナタが仮に居酒屋でバイトをするとします。
「とりあえずビール。ピッチャーで」とお客様から注文を取ります
「かしこまりましたぁ〜」と元気のいい声で応えます(笑)。

さて、ここで、自分がお客様のもとへ1リットル入りのビールピッチャーを運ぶなら、 ガラス製のものとプラスチック製のもの。どちらがよいでしょうか。

「そりゃ〜軽いプラスチックの方がいいじゃん。」

はいその通り。運ぶ立場からすれば軽い方が良いに決まってます。


ではこの話は置いといて、建物の話に戻ります。
一般的な住宅でRC造と鉄骨造の場合の重さを比べてみます。

下図は建物の全部の重さを床面積で割って均した重さ=建物平均重量を比べたものです。
(建物重さ÷延床面積)

下図で建物自重とは建物自身の重さ:例えば柱や床のコンクリートの重さなどです。
また積載荷重とは建物内の人の重さや家具の重さなどです。
建物はこれを支えるためにあります。

RC、鉄骨と構造体が変わっても積載荷重=支えるべき重さはさほど変わりません。だいたい200kg/uです。

ところが建物自重は大きく異なり、鉄骨造とRC造とでは約600kg/m2と1300kg/m2です。
その結果、合計では両者は約800kg/m2と1500kg/m2で、約2倍も!違うことが分かります。

先ほどのビールピッチャーと同じ。同じ重さを運ぶのに全体の重さがゼンゼン違うのです。


建物が重いと地面(地盤)が悪い場合、基礎に杭を打つ必要もありますが、重いほど杭の本数も増え不経済です。 どちらが地球に優しいと言えるでしょうか。

また建物に働く地震の力の大きさは建物の重さに比例しますからRCは更に不利です。


ではなぜそのような、重くて不利であるRCを用いるのでしょうか。
それは、RCが、重いがゆえのメリット(利点)を持っているからです。

まずひとつは、材料が重いと音を遮断する、音が伝わらないというメリットがあります。
一般に音は材料の密度が高いほど=重いほど伝わりにくくなります。

また次に、重いことで部材の大きさ=コンクリートの梁、床の厚さが大きくなり、 この結果、それらが揺れたり振動したりしにくくなります。

鉄骨造のビルなどの場合、前面の道路を大型のトラックが通ると、 それにより床が振動して上下に揺れることがありますが、これは軽いがゆえのデメリットです。
RCでは逆にそのようなことはありません。

更にはRCが重いことにより、外気の温度を通しにくいという特徴があります。断熱性がいいということです。 夏の暑さ、冬の寒さを通しにくいのです。

先ほどの話に戻りますがガラスのピッチャーも重いがゆえに熱を通しにくく、 そのため中の冷たいビールがぬるくなりにくいという利点を持っています。
それゆえ、重くても用いられるのです(バイト君に嫌われるとしても(^^;)。

このようにRCの
   @音が伝わりにくい。
   A振動が起こりにくい
   B熱を通しにくい
というメリットは、 住宅などに適する利点です。居住性が良いということです。
これらの利点からマンションはRCで作られることがほとんどです。


またオフィスビルなどは、主に日中過ごすだけで、 そこで生活する(寝る)わけではありません。
よって、音の伝播、振動などは目をつむることができます。
これよりオフィスビルは通常鉄骨造が採用されるのです。

このようにRCは重いというデメリットを持ちながらも、それがゆえの長所によってマンションなどに用いられているのです。

更に例えて言うと、これは人間のようなものだと言えます。
ある欠点があったとしても、それがゆえの長所があったりするものです。

例えば、背が低いことを嘆く女のコがいたとしても、それがゆえにゆるキャラの「中の人」になれるかもしれません。 いやむしろ、そのような人しか不可能です。

このようにある側面から見た欠点は、別の側面から見たら長所であり、いわばコインの裏表、といえるのです。

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