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パリに真っ赤な「太鼓橋」 黒川紀章 / ピーター・ライス / パリ
Japan Bridge / Kisho Kurokawa/Peter Rice with Ove Arup、RFR / Paris
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Japan Bridge3
Grand Arche
黒川紀章氏設計のジャパン・ブリッジは、 日本古来の橋である太鼓橋をモチーフとし、ピーター・ライス 氏が協働したもので、 パリ、デファンス地区への真っ赤な「エントランスゲート」となっています

■100mの「太鼓橋」

ジャパン・ブリッジはパリ西側郊外の新都心、 デファンス地区に位置しています。
すぐそばにデファンスの「顔」である グラン・アルシュが建っています。

本橋は、交通量の激しいハイウェーの上にかけられており、そのスパンは約100m。
黒川氏自身の設計による、 大開口が特徴のオフィスビル:パシフィックタワーと、 別の設計者による、ほぼ同形状の対岸のビルの間に渡っている、 ビジネス街の歩道橋です。

黒川氏のオリジナルコンセプトとしては、強くカーブした日本の「太鼓橋」をイメージしたものです。

■自己完結のタイド・アーチ

本橋の設計条件として、アーチ橋とした時に発生する水平スラストを両ビルに作用させることが出来なかったので、 自己完結構造であるタイド・アーチとして計画されました。(図1)

通路部分はプレキャスト版による床と、歩行者を風雨から守るガラス(グレージング)の覆いで出来ており、 これらはアーチタイより突き出た束で支持され、最終的には吊材でアーチから吊られています。

アーチは、この歩道部及びアーチ自身の自重により生じる曲げモーメントが最小となるような曲線:高次放物線を採用しています。

図1: アーチタイの有無

A: アーチタイがない場合(アンタイド・アーチ)
アーチの力はそのまま下部へ流れ、支持体には 鉛直力Vと水平力(=スラスト)Hが作用する。
      →支持体はタイヘン!

B: アーチタイがある場合(タイド・アーチ)
アーチの水平力はタイへ流れ、支持体には鉛直力Vのみが作用する。
      →支持体はラクですむ

タイ:つなぎ材
スラスト:アーチが力を受けたとき、その足元が外へ水平に広がろうとする力。


■横倒しに抵抗するツイン・アーチ

このような自重のもとでの荷重:すなわち等分布荷重に対してはアーチは非常に強いのですが、歩道部のグレージングのために、 本橋は横方向に大きな風圧力を受けることとなり、アーチが横倒しになる恐れが生じました。

これに抵抗するため、アーチをダブルにしてその頂部:アーチクラウンにて両者が重なるようにし、 2つのアーチが断面で見た時に三角形になるようにしました。(図2)

さらに歩道の下の2本のアーチタイを結ぶ面に水平ブレースを設け、橋全体でトルションチューブを形成してねじれ抵抗できるようにしました。

横倒し力はこれで処理し、水平力そのものはアーチタイと水平ブレースによる水平梁で両端へ伝達されます。

水平梁とは。。?>> dictionary

■半割のノード

アーチの下端を結びスラストを処理するアーチタイは直径200mmの丸鋼(鋼棒)となっています。

タイと床支持の束が交差する接合部は、当初は鋳鋼によるものでしたが、施工者のアイデアにより、 半割りのノード(鋼球、ボール)をボルト接合する案に変更されました。 これにより施工がスムーズに行われました。

■パリへのエントランスゲート

太鼓橋をイメージしたことで名づけられた「ジャパン・ブリッジ」。

本橋は、単に本来の歩道橋としての役割のみならず、 橋の下のハイウェーでパリへとアクセスするドライバーにとって、 その印象的な形態と、真っ赤な色彩により、パリへのシンボリックな「エントランスゲート」 となっています。

図2: 横方向の風圧力に対する抵抗

a: 風圧力
b: 風圧力による、アーチの横倒し力
  =転倒モーメント
c:橋の横倒し力は橋全体をトルションチューブ とし、ラセンを描くようにして伝達される。
d:支持端での抵抗力
e:歩道部下面に組まれた水平ブレースによる水平梁
f:水平梁により風圧力による水平力aが負担される。

トルションチューブ:
ねじり力=トルションに抵抗する材、ねじり力伝達材

ピ−ター・ライスについてはこちら >>

関連リンク

R.F.R.

ピーターライスが設立した、パリの精鋭構造技術者集団

Japan Bridge

上記サイト内のJapan Bridge のページ(仏語)

'09/09/02  修正
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